Retrievers Once and 4 All retrievers.exblog.jp

• バンビが虹の橋を渡りました。
  [ 2012-01 -07 12:33 ]
• チョビくん。クックちゃんによせて。
  [ 2006-01 -19 19:55 ]
• オースティンのしゅじゅつの、はなし
  [ 2005-12 -03 12:51 ]
• ボリスのしゅじゅつの、はなし。
  [ 2005-11 -16 14:03 ]
• わん回想の終わり
  [ 2005-10 -02 17:26 ]
• なぐさめ、。
  [ 2005-10 -02 12:13 ]
• ハナちゃんの死
  [ 2005-10 -01 13:43 ]
• 犬タオル、。
  [ 2005-09 -30 18:09 ]
• 4頭の黄金のイヌ
  [ 2005-09 -28 18:23 ]
• 訓練所の功罪、。
  [ 2005-09 -28 12:34 ]
• 訓練所への怒り　続き
  [ 2005-09 -25 11:28 ]
• 訓練所への怒り。
  [ 2005-09 -24 15:13 ]
• 犬プール、。
  [ 2005-09 -23 13:23 ]
• しばらくの、2頭との生活その４
  [ 2005-09 -22 18:51 ]
• 皮膚炎
  [ 2005-09 -22 16:47 ]
• 訓練所での面会その３
  [ 2005-09 -21 19:47 ]
• しばらくの、2頭との生活その３
  [ 2005-09 -20 18:46 ]
• 訓練所での面会その２
  [ 2005-09 -20 18:16 ]
• しばらくの、2頭との生活その２
  [ 2005-09 -18 17:32 ]
• しばらくの、2頭との生活
  [ 2005-09 -18 14:09 ]
• 訓練所での面会。
  [ 2005-09 -18 12:21 ]
• 裏庭、緑化計画、。
  [ 2005-09 -17 13:26 ]
• そして最後にタケルちゃん Once and for all
  [ 2005-09 -16 17:20 ]
• 旦那のたくらみ、。
  [ 2005-09 -16 14:18 ]
• ハナちゃん、訓練所へ行く
  [ 2005-09 -16 13:23 ]
• ボリス、虫がでる
  [ 2005-09 -15 18:00 ]
• さらに、黄金のイヌ
  [ 2005-09 -14 16:32 ]
• ハナちゃん
  [ 2005-09 -13 19:23 ]
• Austinがやってきた　'03年3月14日
  [ 2005-09 -13 12:41 ]
• タローの血縁さがし、。
  [ 2005-09 -11 18:52 ]
• ペットロスからの脱出
  [ 2005-09 -11 11:40 ]
• ペットロス、。
  [ 2005-09 -10 12:22 ]
• またね、タロー、。
  [ 2005-09 -09 13:32 ]
• タロー、。
  [ 2005-09 -08 14:32 ]
• たった一頭のMダックス
  [ 2005-09 -07 17:36 ]

　　　ハナとオースティンが訓練所に入校してから一ヶ月目、二頭に会いに行った。実際には入校してから2週間目、ハナちゃんに気付かれないよう、訓練所に行ってハナを見た。1ヶ月目に初めて会うことを許される。里心がつくといけないから、と一ヶ月に一度会うだけにして欲しいと訓練所に言われていた。

　　　ハナを見つけて近づくと、ハナはすぐに気付いて入れられている小屋のなかから吠え始めた。出してもらったハナが訓練士と一緒に私のところへ飛びついてくる。まだ何の訓練もされておらず、訓練所が楽しいところだと思えるように、ここでの生活に慣れさせているそうだった。ひとまず訓練士さんの言うことはよく聞くそうだし、元気いっぱいのハナちゃんを見たのはとても嬉しかった。オーちゃんにも会わせてもらい、2頭とも小屋に戻って行った。お金を払い、自宅に帰る。一ヶ月に2頭で10万円である。

　　　それまで家の裏庭はただの砂地だった。岩砕をいれた土の上にこまかな砂を置いていた。
ワンが来た当初は、アスファルトではなく、土の上だからワンにとっても良いだろうと思っていたが、大きな間違いだった。石を掘り出す。我が家に慣れていくに従い、雨の日には泥だらけになって転げまわる。ワン用のタオルをたくさん用意して、雨の日には毎度毎度、綺麗に拭いてやらなければいけない。転げ回ったあとのひどい泥まみれを解消するために、芝生を植えることにした。

　　２００３年５月、暑い日が続いていた。JAに芝生の注文をしておき、束にして配達してもらう。地面を掻き、砂を上にのべてその上に芝生を並べて置いていく。置いたあと、芝を叩き砂のなかに埋めてから、芝生の目地に砂をさらに埋める。３日間、かかった。

こうして見ると芝生一面に見えるが、はがせばぺロリと取れてしまう。結局は砂の上に並べているだけなのだから。イヌ達が過ごす芝生なので、肥料やクスリは使わない。枯れないよう、水をやり、芝が砂地に根付くまでは、ワン達は芝生立ち入り禁止である。
芝生さん、早く生えてくれ。。イヌたちが待っている。
太陽と水で、元気に育ってくれ。


ひとまず無事に芝生は根付いてくれた。写真は数週間後の芝生とボリス。これでワンたちは石を掘らなくなると思ったのは、それもまた間違いだった。芝生を掘り、やはり石を掘った（とほほ）。雨の日にあまり泥だらけにならなくなったことだけは、まあ良かったかな。ただ芝の生えている春から晩秋までの期間限定だけど。石を掘ってくわえて走り回るのを、追いかけて取り上げるだけでなく、芝生を根から引き抜いてくわえて走りまわるのを、追いかけて取り上げることも増えた。。

　　　旦那の涙と、詫びと、「ぼくがタケルの面倒をぜんぶ見るから」という当てにもならない約束の結果、私は事後承諾というかたちで第４の黄金のイヌをうちに迎えることになった。（とゆーより、私が知る前にもう迎えられていたっけ）　いまさらどうにもならない。タケルはハナちゃんのバリケンに住んでいるし、もう九州から来ているんだし。

　　　妻を説得したら飼います、などと言い、旦那は九州からきたタケルを、しばらく滋賀のブリーダーさんに預かってもらっていたらしい。そして私が名古屋に行ったのを幸いに、タケルをうまうまと我が家に連れこんだのだ。こうして４頭も黄金のイヌを抱えることになった。こうなったら、３頭も４頭もかわらん、と考えることにするしかないんだよな。
　　　
　　　タケルが来てから２週間後、オースティンが訓練所に入校していった。旦那はまた涙していた。イヌに関することには、うちの旦那の涙腺はことのほか弱い。こうして、タケルとボリスと私たちの生活が始まったのだ。

　　　タケルは、ひとなつっこく、歩き方が綺麗でいつも楽しそうだった。ハンドラーさんのもとで過ごしていた頃も、もとの実家で過ごしていたころも、タケルは、ヒトから意地悪されたこともなく、ひとを心から信頼している子だった。私はこんなおりこうさんのゴールデンには初めて出会った。食いしん坊で欲張りなところがあるものの、それもかわいらしく、がっしりとした頭と体格をしている。こんなごついゴールデンも初めて見た。









いまこうやってタケルの顔を見るとすごく幼い顔をしていたことがわかる。当時はもっと仔犬のボリスを見ていたので、タケルちゃんを大人に思ったものだけど。まだまだ図体ばかりでかくて、ういういしい、お子ちゃまだったんだね。ちなみに案の定、タケルの面倒をおもに見るのは私である。

　　ハナがいなくなり、バリケンが一つ空っぽになった。ひとまずプロに託したのだから次はオーちゃんが入校予定でいるし、しばらくはボリスだけになる。一頭だけになると寂しくなるけどなんとか他の2頭が戻ってくるまではボリスの世話を一生懸命やろう。

　　ワンたちの世話をするのは、殆ど私だった。旦那はその頃、もう一頭、オースティンがお世話になった九州のブリーダーさんから、パピーで賞を取った生後11ヶ月の子がいるが、私たちにどうでしょうか？と勧められたため、４頭めを飼いたいなあ、などとのんきなことを言いはじめていた。

　　冗談ではない。3頭でも充分すぎるほどだ。毎日旦那の会社を手伝い、家事をし、ワンの世話に明け暮れる。これ以上私は動けないと言った。旦那は家事もワンの世話の手伝いもまず殆どしないくせに、飼うイヌを増やしてどうするんだ。タローが亡くなって看病や仕事にも疲れてその頃から、私は発熱が続くようになっていた。３７．６度まで熱は上がる。とにかくだるい。病院に行って検査をうけても別に悪いところは出ない。医師が言うには３７．８度熱があれば絶対何か、原因があると言う。私は精神的なもの、疲れが原因だろうと思っていた。発熱に慣れてしまえば、もうそういう体調なんだと思えるから「しょうがないや」と思うのだけど、これ以上疲れる気は毛頭なかった。これが限界だから、これ以上、イヌを飼うなら離婚だと思ってくれ、と私は旦那に言った。旦那も「わかった」と答えた。この話はそれで終わりだと思っていた。
　　
　　ハナが訓練所に行ってしまってから、名古屋の実家の父親の入院検査があり、私が入院期間は一緒に付き添うことになった。母は運転免許を持たないし、バスや地下鉄の便も悪い。タクシーは高い。そんなわけで久しぶりに実家に戻り、ふだんの親不孝を少しでも軽減しようと、私は名古屋に出かけて行った。旦那もめずらしく、愛想よく送り出してくれた。
　　父の検査結果は悪くなく、（と言ってもそう良くもないのだけど）ひとまず薬で月に一度通院すればいいことになり、少し安堵して私は三重に予定より早く戻ってきた。オースティンとボリスが待っている♪

「おーい、ボーちゃん、オーちゃん、ただいまーーっ♪」、と家に入ってイヌ部屋に行くと、
「ワンワンッ」と私に吠える犬の声。「！？」　
知らない犬が、ハナちゃんの入っていたバリケンにいる。
その犬が私に向かって吠えている。・・・誰なんだ？
「あんた、誰やねん・・」低い声でその犬に聞くと、犬は吠えるのをやめ、こっちを見ている。イヌ部屋がシーーーンとなり、他の2頭も私を見ている。ボリスは「ぼく、言えませんっ　ぼく、しっているけど言えませんっ」といいたげな顔をしていた。

そうか、あいつはあたしが反対して、これ以上イヌを増やすなら離婚だと言ったのも承知の上で４頭めのゴールデンを家に連れてきたんやな。。そうかそうか、ほんなら離婚するわい。
家で貴重品をまとめていると、旦那から携帯に電話がかかってきた。私は怒りのあまり、声が変わってしまっていたらしい。「はい」と出ると「すみません、間違えました」と旦那の声で電話が切られた。

　再び、着信音が鳴る。２度切られ、ようやく奴は私が家に帰ってきていることを知って、慌てて会社から家に帰ってきた。「これにはワケがあんねん！」と必死に言い訳する旦那。どーせ、妻を説得できたら、などと適当なことを言って新しいイヌを連れてきたに決まってる。こいつは私が実家の父の入院検査で不在にする隙に、新しいイヌを連れ込むつもりだったのだ。だからあんなに愛想よく、私を名古屋に送りだしたのだ。「あんたとはもう離婚やっ」と私は怒り狂った。



　　

　1ヶ月半ほど地元の訓練学校から訓練士に出張訓練してもらった。オースティンとハナ、ちょこっとボリスに基本訓練を教えてもらう。訓練士は若い女性で、ワン達もかなり喜んでいるようだった。出張訓練ののち、４～５ヶ月ほど、オースティンとハナを訓練所にお願いすることにした。その訓練所は大会などでも常に上位入賞しているところで、警察犬も含めレベルの高い訓練所と聞いていた。その訓練所へは何度も訓練の様子やそこにいるイヌたちを見に行った。
　　ただ、私と旦那の望みは、家庭犬としての訓練で充分である。ハナちゃんは頭はいいが、ガサガサする動きの多い子なので、そのあたりがもう少し落ち着いたワンになることが私の望みだった。オースティンはおとなしいものの、躾されずに生まれ育ってきたので、訓練所でお願いしようと思った。言い訳だが、夫婦共働きではそのための時間を充分に取ることができない。プロに頼んだほうがいいと考えた。訓練所に、２～３ヶ月で家庭犬なら訓練期間は充分なんじゃないですか？と尋ねると、きちんとした訓練をイヌにいれるには半年は預かりたいと言う。ハナちゃんを生後5ヶ月から入校、オースティンは旦那がさびしがるのでもう数週間あとに入校させることにした。

　　2003年5月15日、ハナちゃんが嬉しそうにいつもの女性の訓練士に迎えに来てもらい、車に乗って訓練所に行った。もちろん、私たちもゆくゆく訓練所を訪問するときは二頭を扱えるように指導を受けることになるそうだ。ワンがホームシックにならないよう、一ヶ月に一度の訪問とされる。訓練所というのはみなそうなんだろうか。

　　ハナちゃんは生後5ヶ月、体重23キロで訓練所に入った。私はハナの勘が結構鋭く、手前ミソだけど、頭がすごくいいと思っていた。訓練所でそれを伸ばしてもらえたら。そして風変わりな仔犬のボリスは訓練所に入れず、出張訓練を続けてもらうことにした。ハナとオーちゃんの様子は、ボリスの訓練を週に1度、来てもらうたびに聞くことができる。

　　ハナちゃんが行ってしまうと、3つのバリケンの一つが空っぽになって、なんだかとてもさびしかった。でもハナちゃんのためになるなら、それくらいは我慢しなければいけない。次にハナに会うのは一ヵ月後と言われたが、あまり待てそうもない。

　　　ボリスが我が家に来たものの、抱いてみるとひどく痩せている。仔犬用のミルクやフードを与えて、便の様子を見ていたとき、死んだ虫が便のなかにいるのを発見。驚いた。すぐに地元の獣医さんに連れていき、薬をもらう。虫下しの薬を飲ませてみると細長い半透明の虫が死んで出てくる。キモイ。。こんな虫がおなかのなかにいるなんて。うちの旦那は、ボリスのことを心配するあまり、「犬が死んでもいいからもっとたくさん虫下しを飲ませろ」と言う。心配なのはわかるけど、うちの旦那って少しおかしーんじゃないだろうか？　弁明すると、うちの旦那は案外、このボリスを可愛がっているのだけど。タローが亡くなって以来、旦那はワンの怪我や病気にものすごく細かく神経を遣うようになっているのだ。

　　何度かにわけて虫が便で出た。長いものなんて10センチほどもある。虫のせいで痩せていたのだろうか、仔犬に虫がいるのは仕方のないことだそうで、通常はブリーダーさんのところで虫下しを飲ませるそうだが、やっぱり虫が出し切れないことも多いそうだ。ひとまず虫退治が終わって、しばらく便の観察をし続けて、ボリスはおなかに虫のいない子になった。獣医さんに便の一部を持って行っては、虫の卵が出ないか、チェックしてもらった。

　　仔犬の時期は何かといろんなことが起きる。ワクチンを注射してもらいに行くと、その夜、すごくボリスがぐったりして体全体、顔全体がむくんでいる。たまにワクチンでそういう拒否反応みたいなのが出るそうで、もう一度、その夜、獣医さんのところで、それを直す注射をしてもらいに行った。

　　　　
ハナが仔犬の頃に作った囲いを縁側に置いて、ボリスをなかに入れて日光浴と運動をさせる。ハナちゃん、オースティンが、ボリスに興味津々丸で、囲いのなかに入ろうとする。お互いに匂いを嗅ぎあい、確認しあっているが、とにかくボリスはまだまだ小さいので怪我でもしたら大変、とボリスと一緒にはさせられない。この頃、ハナは一気に手足がひょろひょろと伸びて、毛ぶきはあまりなく、ラブラドールかな？と思ったりする風貌に一時期なってた。お転婆顔が転じて、一時期、海賊のような面がまえになり、家の庭をのしのし歩き回っていた。

春の天気の良い日が続き、ボリスが日光浴し、ボリスが排便し、便のチェックしてボリスのお尻を拭いてやる。旦那も「何がかなしゅーてイヌのけつ拭いたらなあかんねん」などとボヤキながら、まめにボリスの面倒を見てくれる。虫退治が終わってから、ボリスはだんだん大きくなっていった。外でほかのことをしていると囲いに前足をかけて、こっちを見ている。「ぼくをここにおいてどっかにいったりしませんよね？」


　友達に左の画像を見せたら、「浅丘雪路に似ている」と言われた。なんとなーく、雰囲気はあるような。明るい幸せいっぱいの顔つきではないけれど、私たちになついてはいるようだった。いつもものを考えているようで、（でもその実、たいしたことは考えていないだろうけど）こっちをずっと見ている子だ。「ぼくに虫がいたって、しっていますか？」ボリスはいつも敬語である。そんな感じ。

ゴールデンレトリバーが3頭になったところで、そろそろ頭数は限界かな、と思い始めていた。夫婦二人で黄金のイヌ3頭、充分である。どの子も、これから要訓練、。ヒトもイヌも、覚えなくちゃいけないことが多い。2003年春のことだった。

　　そのニュースは唐突にもたらされた。発端は、旦那が、亡くなったタローの血縁探しに動き回っていたころ、あちこちに血縁の子を世話してほしいとお願いしたのが始まりだった。どこにお願いしてもあまり本気では受け取ってもらえず（仕方ないことかも知れない）、とうとう私たち夫婦は自力で滋賀のブリーダーさんを通じ、かつ九州のブリーダーさんへと紹介をされて、我が家にオースティンを迎えたのだ。

　　で、そのニュースとは。タローの血縁となる男の子のゴールデンレトリバーの話なんである。ハナちゃんを頂いた地元の訓練所の校長が愛知県の七宝町のブリーダーさんに話をもっていったらしい。そして生まれたから、我が家のためにゴールデンの子を次の週に受け取ってくる、と言うのだ。。
　　ほかにどーしたらいいのだ。。確かにお願いしていたこちらとしては、「もう血縁の子が一頭見つかりましたので結構です」とは絶対に言えない。向こうだって「いまさら困る」となりそうだった。私たちも、色んなところにお願いしても、まったく何のフィードバックもないので、もうとっくに期待していなかったのだ。
　　オースティンは確かに横顔がタローに似ている。生まれた七宝町の子も、タローに似ているだろうか？　タロー似なら、と思うと心が動く。地元の訓練所にはハナちゃんとオースティンの出張訓練もお願いしようと考えているところだった。地元だからこそ、親切に探してくれたのだろうか。うちで頂くことを前提に、仔犬に会いに行った。

　　
風変わりな仔犬だった。明るさやおちゃめぶり、嬉しそうな笑顔が無い。ゴールデンレトリバーの仔犬って、雑誌や写真で見るときはいつもはじけるような幸せを顔に出しているのが仔犬だと思っていた。ハナちゃんも初めて会ったときに明るいけど変わり者という印象だったが、今度出会った仔犬は、もっとずっと変だった。びっくりしたことにすごく痩せている。そして訓練所にいる校長家族の子供たちにころがされている。そばに寄ると、じっとして、こっちをそぅっと見ている。顔の表情は、形容しがたいが、「ぼく、生まれてきてよかったんでしょうか？」と言うかのようだった。タローにはまったく似ていなかった。

　　なんだか、可愛さより、かわいそうさが先にたって、「こいつ、変わってるな」という旦那を押し切って、その日、私は仔犬を連れて帰ってきた。ハナちゃんが仔犬だった頃に使ったケージも道具も全部揃っているのだから、これ以上、訓練所に置いておかず、もう家に連れ帰るほうがこの子にいいのではないか。まだ生後2ヵ月ならあまりころがされているのは骨形成によくないのでは、などと要らぬ心配が重なり、なんだか哀れになってしまったのだ。

こうして、私たち夫婦は、3頭の黄金のイヌを抱えて暮らすことになった。私は新しい男の子に、Borrisという名前をつけてやった。その日、自宅に戻ってオシッコをさせてから、まだまだ小さいボリスを私は胸に乗せて、応接間のソファーで横になった。ついうとうとしてしまい、前を見ると、私の胸でボリスが眠り込んでいた。なんて、可愛いのだろう。ボーちゃん、おまえはあたしががんばって育てていくからね。

追　ちなみにこのボリスはタローの血縁、は血縁なのだ。ボリス君は、タローの祖父にあたるSound Barrier のひ孫なのである。

オースティンがうちになじんでいく一方で、ハナちゃんはのびのびと育っていた。非常に活発で好奇心旺盛。ひとに乱暴することはないけれど、おとなしくもない。おきゃんなお転婆娘になっていった。察しがよくて、ひとの言うこともある程度わかる。ボール遊びが大好きで、さすが、レトリバーという名のごとく、放ってやるボールを取りに行っては戻ってくる。音楽を聞かせたり、歌を歌ってやると、頭を左右にゆっくり振る癖も面白かった。
のびのびしている一方で、動きが雑で、女の子らしい仕草は欠けている子だった。
目を離しているすきに次々とモノを破壊していくし。落ち着きがない。
変なものを飲み込まないようにいつも見張っていなければいけない。
ハナちゃんが男の子に生まれていたら、リーダー格になっていたように思う。
動きが大胆で、体格がハナよりずっと大きいオースティンにまったく負けていなかった。



夜、一緒に散歩するとあっちへふらふら、こっちへふらふら。（黒澤映画の「乱」みたい）
ゴールデンの子を育てる初心者の私には、綺麗な歩かせかたが出来ない。
地元にある訓練所の訓練士さんに、週に数回、オーちゃんとハナちゃんの訓練のために
出張で自宅に来てもらうことを考えはじめた。この訓練所で、ハナちゃんは頂いたのだ。

　　旦那の行動は早かった。すぐに九州に行くと言う。11ヶ月の仔犬（？）はブリーダーさんのもとで育っているが、私自身は、躾のされないままの11ヶ月の子が我が家に来たら、相当苦労するのではないか、と危ぶんでいた。けれど、「泣く子に勝てぬ」のことわざどおり、旦那が必死でタローの血縁の子を探しているので、「あんたがそうしたいなら、そうしてよ」と返事をした。

　　オースティンという呼び名のついているその11ヶ月の子は、写真で見ると内気そうな子だった。旦那は九州へ飛行機で行き、その日の夜、名古屋にオースティンを連れてまた飛んで帰ってきた。私は車で空港へ迎えに行き、ご対面となった。体つきが小さく、毛並みは非常にやわらかく、毛ぶきも美しかった。そして旦那以外に頼れる者がいない、という感じで、旦那の後ばかりついてまわる。間違いなくしつけはされておらず、女の子のハナちゃんに加えて、このオースティンにも一緒に暮らすことを教えることが必要そうだった。ブリーダーさんのところではイヌたちはみんな大きな小屋のなかでバリケンがいくつも並べられて多頭で暮らしていたそうだ。

　　旦那の喜びようは、タローの死であれだけ落ち込んでいたあとだったので、こちらも嬉しかった。オースティンは必死で旦那のあとをついてくる。このヒトについていかないと大変なことになる、とでも言うように旦那がいないとヒンヒンと騒いだ。うちの暮らしに少しずつ慣れていくように家のなかにイヌ部屋を用意して、ハナちゃんのとなりにもう一つバリケンを置いた。



九州でのオースティンの顔。心なしか、つまらなそうにも見える





そして我が家に来たオースティン。表情が明るくなったような。。






　　我が家でのオーちゃんは、走る、走る。イヌ部屋から外の庭への出入り口を作った。下は出動風景。

タローに似たゴールデンを探したい、そして僕はみんなにかわいがってもらえるゴールデンに育てる、という旦那の決意を聞いて、私はタローの血統書を調べてみることを提案した。タローの子供は作らなかったので、「タローに似た子」をさがすなら、「タローと血縁関係のある子」を探したほうが、「似る」のではないか。タローを頂いた横浜のブリーダーさんはいまはもう連絡は取れない。タローの兄弟犬たちに子供はいない。タローの父親犬、母親犬から、ほかに血縁がいなかったかを辿っていくことにした。
　
　 インターネットはすばらしい。アメリカのKennnel Club等、純血種は血統を大事にするためどんな犬だったか、どんな子を輩出したか、アメリカのいくつものサイトでわかるようになっている。で、岩をも通す一念、とゆーやつで、以下のことがわかった。

・タローの父親犬はBaylor's Once In a Blue Moonという名前でアメリカンチャンピオン。
・Baylor's Once in a Blue Moon　は、横浜の警察犬訓練所のかたが、アメリカから輸入、うちのタローは日本で最初に出産した子供だった。（93年生まれ）
・Baylor's Once In a Blue Moonは、知るひとぞ知る有名なアメリカンチャンプの
　ブルーヤンダー（Blue Yonder)と同腹の兄弟
・ブルーヤンダー、ブルームーン（Once in a blue moon )の親犬がこれまたアメリカンチャ　ンピオンで、九州のブリーダーさんが日本に輸入している。名前はSignature's Sound
Barrier。呼び名はブーマー　→この直子であるLookも九州にいる。ブーマーの冷凍精子は
　一回の費用がゼロが６つ並ぶらしい。。本当なのかな。スゴイね。

ネットで知り合った親切な方たちを通じて、ようやく九州のブリーダーさんまで辿り着くことができた。こうして知り合った方たちのご親切とご好意は本当に感謝してもしきれない。いまも交流を続けている。

　 もちろんゴールデンに詳しい方ならこうした血統については知っていることなんだろうと思う。
けれども無知な私たちには初めての知識だった。また、私たち素人夫婦の場合には、死んだ犬の血縁の子が欲しい、という「ちょっと変わり者夫婦の望み」のためか、この地元（田舎）では、あまり真剣に取り合ってくれるブリーダーさんには縁が無さそうだった。ブーマーの血縁の子がいたらお願いします、と言っても反応ははかばかしくなかった。ひとつには、かつてほど、ゴールデンが日本で人気犬種ではない、ということがある。ラブラドール、Mダックス、チワワ。このあたりがいまの人気なのだ。ゴールデンは10位内に入るレベル。人気があまりなければ、交配も少なくなる。

　 そういうわけで、九州にいるブーマーの孫である11ヶ月の男の子を、我が家に出してくれることに感謝して、旦那と私は、第２の黄金のイヌ、Austin を我が家に迎えることになった。


　


タローのために作ったタローの小屋。いまでは物置小屋と化している。
私たち素人夫婦は、大型犬も家の中で飼うべきだ（そのほうがよく観察
できて何かあっても気付きやすい、犬も安心）ということにようやく目覚め、
この小屋はワン用に使わないことにした。