ドン・ウィンズロウという著者は今年本のなかで出会った掘り出しモノだった。「ストリート・キッズ」から始まるこのシリーズの、セミ・ハードボイルド小説の主人公のニールは探偵のノウハウを父親代わりのプロに叩きこまれた若者。軽口やへらず口で覆われた殻のなかには繊細な心が隠されている。3、4作は共通するものの、舞台設定は巻ごとでかなり変わる。著者の実際の経験に基くことにより、こうしたフィクションが現実味を帯びてくるから読んでいて充分に面白い。
ニール・ケアリーシリーズは「仏陀の鏡への道」、「高く孤独な道を行け」、「ウォータースライドをのぼれ」と続いている。ストーリーもセリフも、どの巻も無駄がなくって小気味良い。