旦那が元気を出すのを待ちながら、私はハナちゃんの世話と家事と仕事に明け暮れていた。やらなくてはいけないことがあるというのはありがたい。落ち込みの続く旦那を尻目に、こいつの気持ちを慰めるにはどうしたものやら、と、思いつくことをやってみた。まずはタローに似ているゴールデンの雑誌や本を探す。
そのひとつが川原亜矢子さんの「ソレイユ」の数冊の本だった。ソレイユが幸せそうにしている写真を見つめては、タローが生きていたら、と思う。もちろん、ソレイユは女の子だし、タローの顔とは後に冷静になってから見るとそりゃ違うのだ。。。でも、当時は、「このページのこのソレイユの顔が、なんとなくタローに似ている」という強引も強引な結びつけかたで、私は本のなかにタローを探した。そして旦那に、「タローに似てるよ」と言ってはいちいち見せた。ゴールデンレトリバーの雑誌も買い込み、ハナちゃんの躾もしっかりしなくてはと思い、躾の本も買い込んだ。
購入した本のなかに、ある文庫本があり、その中にしおりがあった。しおりには、「盲導犬クイールの一生」と書かれ、子犬の写真が載っていた。なにかもの問いたげな瞳の仔犬の写真で、だんだん気になってきて、その本をAmazonで購入した。しおりの仔犬の顔は、その本の表紙の顔だった。
この本には深い感動がある。文章を読んで涙があふれてくるのは何年ぶりだったろう。「クイールへの手紙」という本もそのあと購入。Amazon風に言えば、「どちらもおすすめ!」である。
こんなに賢いワンもいるのだ。神様のくれた才能と、それをのばす人たちと、才能関係なしに、ワンの一生を心から愛する人たち。
もちろんクイールに限らず、盲導犬や介助犬など、すばらしいワンはたくさんいる。この本の描写、記述は、感情的な言葉をつかわず、まるで事実を写真のようにして切りとっているかのようだった。レンズ越しに覗き、すこし距離を置き、クイールを正確に捉えようとしているような。
それを読んで、読み手の私が大きな感情を呼びさまされる。その振り子がすごく大きい。
郡司ななえさんの「ベルナのしっぽ」(この本も良いけど)とはまた違う味の盲導犬の本だった。
我が旦那も相当、感激したようだ。「タローはクイールなんや。。」
旦那の感想は私には意味不明である。しかしとりあえず旦那はタローだけでなく、クイールやソレイユや、ゴールデンに関する本など、他のワンにも関心を持つようになってきていた。そして彼は、会社に来て仕事はせずに、インターネットで、タローに似た黄金のイヌを探すようになっていた。ゴールデンだけでなく、「タローに似ているから」という旦那の勝手な主張により、旦那は大型の他の犬種もチェックするようになった。ピレネーや、ニューファンドランド、バーニーズにいたるまで。。。おいおい勘弁してくれよ。。