去年の秋、訓練所からハナが戻ってきたあとだったが、ボリスの具合が悪くなった。
食べる速度が落ち、便もしない。あまりにもゆっくり食べて、それが2日続いたので獣医さんに連れて行った。レントゲン写真を撮ってもらうが、何も映らないと言われる。もちろん、何か飲み込んだとしても、映るものと映らないものがあるから、ひとまず嘔吐させる薬を与えましょう、と言われた。30分~1時間ほどで、吐き気がしてくるので、何か飲み込んだのなら吐くかも知れない、とのこと。注射をされて、熱をはかり(微熱)、胃薬をもらって帰宅。
自宅に戻り庭に出すとボリスは吐きはじめたが、液状のものが出るだけで何も出ない。吐き気でなおさら気分が悪いらしく、じいっと座っている。お水は飲む。
夜、近所のいつもの獣医さんにも相談して、翌日、ボリスを診ていただくことに。この獣医さんは近所で診療所を自宅に併設して、こまかなことは自宅でも診てくれる。けど手術となるとその獣医さんの開業している病院に行くことになる。車で1時間ほどのところへ、翌朝、ボリスを連れて行った。レントゲンを2つの角度から撮る。強いて言えば、うすく小さく何か映るが、詰まっているにしては小さすぎる影だと言われる。何にせよ、開腹してみなくてはわからない。お願いします、と言って、ボリスは全身麻酔を受けることになった。誓約書にサインした。
ボリスは私の秘蔵っ子で、その変わった性格と可愛さのためにどこにもやらず、私が育ててきたから、本当に落ち込んでしまった。麻酔をうけて効いてくるまぎわまで傍にいて、それから手術の間は近所の喫茶店にいた。1時間ほどで手術が終わり、麻酔がさめかけてきたときに携帯に電話をもらって、再び、動物病院に戻った。ごめんね、と何度もボリスに謝った。
全身麻酔から覚めかけているボリスは、ぼんやりとしてひっくり返り、目を開けてゆらゆらとしていた。今回の開腹手術の出血量は、お猪口に一杯程度。縫い合わされた糸は、2重に行われており、外皮は抜糸、内側は溶けていく糸を使ったそうだ。
で、出たのは、小石が約20粒。本当の小石。小指の爪ほどの大きさの小石ばかりが20粒ほど出てきたと言う。普通は排便で出る大きさの石で、詰まるような量ではないんだけど、、と獣医さんに言われつつ、それでも20粒ほどあれば詰まったのだ。いつの間にやら、おなかにたまったのだと思う。
獣医さんがその晩は動物病院に泊まり込んでくれて、翌日、ボリスを迎えに行った。通常は3日間ほど、病院によっては1週間ほど入院で預かるそうだが、その獣医さんによると、イヌにとっては、入院していることが精神的ストレスになるので、自宅で看護をきちんとできるなら、家に帰したほうがいい、と言う。そんなわけで翌日のお昼に、ボリスを自宅に連れ帰ってきた。ボリスはあまりにもおとなしい子なので、手術のあとも、体調がいいのか悪いのか、ボリスを見ても判断できなかったそうだ。さも、ありなん。。わかる気がする。
帰ってきた当日はお水、そして翌日から一日にひとにぎりほどのペットフードをふやかして与え、痛み止め、抗生物質を与えて、ボリスと一緒に居間にフトンを敷いて寝泊りした。一週間ほどでボリスはずいぶんと元気になり、痛々しい、剃られたおなかと、糸をつけてはいたけど、回復力はすばらしかった。
いまでは糸のあともなく、すっかり綺麗なおなかになって、よく食べる。2度と石を食べないように、常に1分でも目を離さないように、外で出すときは庭でも一緒にいる。ボリスは変わりものにくわえて、いまや要注意人物なのだ。