ハナちゃんを訓練所に預けたのは4ヶ月間。その期間にハナがうけた経験は、その後のハナちゃんにまとわりつくことになった。 訓練所に預ける前と、訓練所から帰ってきてからとではハナちゃんの性質が変わってしまっていた。
まず、食糞をするようになったこと(自分の糞以外は食べない)。そして、カミナリや花火の音、ガラガラいう音をすべて怖がり、気が狂ったように騒いで不安定になること。預ける前にはゆったりと食べていた食事を、ガツガツと猛烈なスピードで飲み込み、早すぎて吐いてしまったり、それでも食べよう、食べようと必死なこと。成長できなくなった小さな体格もさることながら、こうした性質の変化も、腹が立つほどくやしかった。さらに訓練所から戻って1週間ほどは、いつもバリケンのなかで排泄、排尿して、後始末をしてバリケンを洗いながら、「いったい訓練所に預けたのは何のためやねん」と思わずにいられなかった。
イヌは話すことができない。のちになって気付いたのは、オースティンとハナだけ、私が近くで庭でホウキを持っていたりすると、身をすくめて目を閉じる。ボリスとタケルは棒を持っていても手を振り上げてみても何も動じないのに。
後日、訓練所の校長と訓練士に来てもらい、ハナについて話をしたが、その訓練所が参加した、イタリアで行われた訓練犬の世界大会のため、ハナをいつも見てくれていた女性訓練士は、大会のための犬の訓練にまわり、それまで太っていたハナをダイエットさせようとフードの量を減らしていたのを、次に引き継いだ別の担当の訓練士が、程度を加減せずにずっと減らしっぱなしにしていたと説明された。
ハナは腹がへるせいか、訓練所で排泄してはそれを食糞していたそうだ。そして訓練所のバリケンの中で排泄を繰り返していたそうだった。預けたときにはそんなことをする子じゃなく、綺麗好きでバリケンの中で粗相しないように、自分でお知らせしてくれていた子だったのに。
訓練所についてあれこれ書くのはもうこれで終わりだが、私が怒ったのは、訓練所に電話してハナとオースティンの様子を尋ねるたびに「問題ありません」という返事だったこと。訓練所から戻してからこんな説明をあとになって白状されるくらいなら、どうして言ってくれない?不信感。ボリスの出張訓練も、やめた。それ以来、この訓練所とはご縁を切った。ハナちゃんとボリスを購入したのは、この訓練所だったけれど。
ちなみにオースティン、ハナについて、家庭犬としての躾を訓練所で学んだ成果があったかどうかというと、特に何もなかったと思う。ただ、訓練所から戻ったあと、オースティンとハナはものすごく、うちに帰ってこれて嬉しそうだった。「もう絶対どこへもやらんからな、うちにずっとおったらええんやで」と撫でてやると、とってもとっても幸せな顔をした。これは一つの、訓練所の効果だったかも知れない。
右写真はハナが訓練所から戻って2ヵ月後。初ヒートがやってきた頃だ。